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個人事業主の相続手続きとは?手続きのポイントと生前にできる対策を紹介

2020/06/29
更新日:2024/05/13

はじめに

個人事業主が死亡して相続が発生する場合、法人と比べて手続きが複雑です。その事業を誰かが承継する場合には、揉めごとも多いといわれています。
個人事業主の相続は、どのような手続きが必要なのでしょうか。今回は、個人事業主の相続における事業承継に詳しい金馬会計事務所の金馬さんにお話を伺いました。


1.個人事業主の事業用資産の相続とは

分割のイメージ
個人事業主が亡くなって相続が発生した場合、故人が所有していた事業用資産は、個人資産とまとめて相続対象資産として遺産分割協議にかけられます。個人事業主が死亡した後に、事業をきちんと継続して営むためには、事業用資産を事業承継者たる相続人にまとめて相続させるのが望ましいです。

しかし、後継者にまとめて相続するとなった場合、相続できる遺産が減るおそれのある他の相続人は納得できず、遺産分割協議がまとまらない可能性もあります。
また、個人事業主が所有する資産のうち、どれが事業用でどれが個人用なのかを把握して分類するだけでも非常に煩雑な作業です。

法人であれば事業用資産は会社のものとなるので相続は発生しませんが、個人事業主の場合は事業用資産も相続の対象となるため手続きが多く、また遺産分割協議においても揉めやすいため、生前から相続に備えて事前準備をしておくことが重要といえます。

【関連記事】跡継ぎがいない場合、事業を存続させる方法とは?

2.基本的な税務上の手続きと承継における手続

個人事業主の死亡時に発生する税務上の手続きについて、主なものをまとめておきます。

まずは、事業が承継によって継続されるかどうかに関わらず行わなければならない手続きと、事業承継が行われる場合に追加で発生する手続きに分けて紹介します。

(1)基本的に発生する手続き

<個人事業主の「死亡届出書」>

提出先:所轄税務署
提出期限:死亡日以降すみやかに

<個人事業の廃業届出書>

提出先:所轄税務署
提出期限:死亡日から1カ月以内

<事業廃止届出手続>

提出先:所轄税務署
提出期限:死亡日以降すみやかに

<給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出>

提出先:所轄税務署
提出期限:死亡日から1カ月以内

<個人事業主の所得税に係る準確定申告>

提出先:所轄税務署
提出期限:亡くなった日から4カ月以内

(2)個人事業を承継する場合に発生する手続

<(承継する)個人事業の開業届出書>

提出先:所轄税務署
提出期限:死亡日から1カ月以内

<給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出>

提出先:所轄税務署
提出期限:死亡日から1カ月以内

<所得税の青色申告承認申請書>

提出先:所轄税務署
提出期限:相続人が相続前より既に事業を営んでいた場合は原則どおりその年の3月15日まで

相続人が事業を営んでいなかった場合、以下のとおりの取扱いとなるので注意が必要

〜被相続人が青色申告の場合〜

1月1日から8月31日までに亡くなった場合 … 亡くなった日から4カ月以内
9月1日から10月31日までに亡くなった場合 … 亡くなった年の12月31日まで
11月1日から12月31日までに亡くなった場合 … 亡くなった年の翌年2月15日まで

〜被相続人が白色申告の場合〜

1月1日から1月15日までに亡くなった場合 … 亡くなった年の3月15日まで
1月16日以降に亡くなった場合 … 亡くなった日から2カ月以内

【関連記事】借金や債務があっても廃業できる?廃業の手続きや注意しなければならないポイントも解説

3.相続時の準確定申告

印鑑を押す場面

個人事業主が死亡した場合は、相続人が1月1日からその時点までに確定している所得額や税額を計算して、故人に代わって確定申告をする必要があります。これを「準確定申告」と呼びます。期限は、相続の開始を知った日の翌日から4カ月以内です。

前年の確定申告書を提出する前に死亡した場合は、前年の分と本年の分とを合わせて、相続の開始を知った日の翌日から4カ月以内に準確定申告をする必要があります。

また、相続人等が2人以上いることもあります。この場合は、それぞれの相続人が連署の準確定申告書を提出します。または、ほかの相続人名を付記した申告書を各人が別々に提出することもできます。

ここまで挙げたものは一部であり、全貌はもう少し煩雑です。
普通の会社法人であれば、事業で使用する資産は法人に帰属しているのでややこしくありません。個人事業主であるがゆえに、手続きや相続人同士のトラブルなど注意すべき問題があるのです。

4.相続時の対策について

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前述の通り、個人事業主の相続は非常に複雑です。生前から多少なりとも、対策を施しておくことが賢明といえるでしょう。

(1)個人事業の法人化

個人事業を法人化しておけば、事業用資産は会社の資産となるので個人用の資産と明確に区分することができます。

また、その会社の株式は相続税の対象資産となりますが、会社の自社株対策を行うことで、株式の評価額を引き下げることも可能です。その方が税金の負担が下がります。

(2)個人事業の「事業承継税制」

また、現在は個人事業主についても「事業承継税制」の適用があり、要件をみたす場合は贈与税・相続税の納税の免除を受けることも可能です。

令和元年度税制改正によって創設された個人版事業承継税制は、青色申告に係る事業(不動産貸付業等を除く)を行っていた事業者の後継者として円滑化法の認定を受けた人のためのものです。

平成31年1月1日から令和10年12月31日まで贈与又は相続等により、特定事業用資産を取得した場合、その青色申告に係る事業の継続等、その特定事業用資産に係る贈与税・相続税の全額の納税が一定の要件のもとに猶予されます。

また、後継者の死亡等、一定の事由によって納税が猶予されている贈与税・相続税の納税が免除されます。

(3)生前贈与による承継

個人事業主の生前の事業承継は、法人化以外にも贈与として事業の承継をすることもできます。

相続を待たずに贈与にて後継者へ事業承継を行いたい場合は、事業承継者へ事業用資産の贈与を実施するとともに、現事業主が事業の廃業手続を実施し、事業承継者が開業手続を実施することで手続を行うことができます。

この場合に前述の事業承継税制の対象となりえます。要件を満たせば税務上での優遇が受けられます。

5.まとめ

家族と士業で相談
個人事業主の相続では、なるべく問題が生じないようにしたいものです。また、事業承継を円滑に実施するためには、早いうちから準備をしておくことが大切です。

相続においては、法律や税務の問題などの専門的な知識が必要となる場合が多いので、あらかじめ弁護士や税理士など専門家に相談しておくことが賢明でしょう。

話者紹介

金馬さん
金馬 直紀(こんま なおき)
THINKWELL株式会社 代表取締役
金馬会計事務所 代表
公認会計士、税理士
兵庫県神戸市出身、大阪市立大学(経済学部)卒業。公認会計士試験合格後、EY新日本有限責任監査法人にて上場企業・金融機関・各種法人等の監査業務に携わる。
その後、EY新日本有限責任監査法人のFAS部門(現EYトランザクション・アドバイザリー・サービス㈱)にてM&Aアドバイザリー業務、事業再生支援業務に携わり、財務デューデリジェンス、企業価値評価業務、事業計画策定支援業務等に従事。
2016年に金馬会計事務所およびTHINKWELL株式会社を設立。様々な会社の財務DD、企業価値評価、事業計画策定、税務業務を行ってきた経験を活かし、M&Aや事業承継のサポートを手掛ける。

 

 

 

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