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自動車整備業のM&Aにおけるポイントとは?売却や買収の事例、業界動向とともに解説

2020/03/29
更新日:2021/02/09

はじめに

車検をはじめとした自動車の整備や補修を行う自動車整備業は、人材不足が深刻な業種です。M&Aで人材を獲得するケースも多く、購入意欲も強いといわれる自動車整備業におけるM&Aのメリットや成功のポイント、注意点を、自動車整備業の現状と業界動向とともに株式会社ヒルストンの石坂さんに伺いました。


1.自動車整備業の基本と業界動向


最初に、自動車整備業に関する基本、そして業界動向について解説します。

(1)自動車整備業、自動車整備工場とはどのようなところか

自動車を整備・補修するところです。自動車整備工場には、「指定工場」と「認証工場」の2種類があります。

車を車検に出すと、即日完了するところと1泊2日程度かかるところがあります。即日車検が完了するのが指定工場、もっと長くかかるのが認証工場です。2種類の工場には、車検を行う工場が運輸局から認可を受けているかどうかという違いがあります。

指定工場は、工場内に検査ラインを設置することが認められているため、その場で車検を終わらせられます。認証工場は、検査ラインがなく簡易的なチェックを行うのみであるため、工場内ですべての検査ができず、陸運局で車検の最終チェックをしてもらう必要があります。そのため、認証工場での車検は指定工場よりも日数が長くかかるのです。指定工場では様々な設備を有しており、自動車検査員の有資格者である検査員が1名必要です。

自動車整備業は、全国的に個人事業に近い小規模店舗から大手の自動車販売店、中古車販売店など、幅広く行われています。しかし中小企業が多く、販売と整備を同時に行う店舗も多いといえます。また、トラックや軽自動車など、車のカテゴリーで分かれている場合もあります。

(2)自動車整備業の業界動向とは

基本的に、自動車が売れなくなってきています。かつて、高度成長期は人口が増え、車もよく売れていました。しかし、現在は人口減少により車に乗る人が減っています。加えて「車離れ」という要因もあり、業界としては縮小傾向にあるというのが一般論です。

自動車整備については、以前は機械の部分を整備士が直すというものでしたが、近年は自動車部品がユニット化するなどハードが変わってきています。また、電気自動車やハイブリッド車が普及している中、従来のように整備士が車の内部まで整備することが困難となっています。このような状況から、機械の整備から車の傷・へこみなどを修理する板金を強化する動きが顕在化しています。

若者の人数が減り、自動車整備専門学校への進学率も減少しているので、整備士を採用しづらいという背景もあります。自動車のマーケットは縮小していますが、車検という制度があるので自動車整備業には一定のニーズがあります。ところが現状は、整備士の数そのものが減少しているのです。

設備産業は有資格者が必要であるため新規参入がしづらい業界です。高度成長期以降に創業した企業では後継者不在の問題を抱える経営者も多く、いわゆる事業承継型のM&Aに当てはまる事業承継の時期を迎えている業界ともいえます。一般的には、比較的高齢の経営者が後継者不在により事業を譲渡、または売却したいというケースが多く見られます。

自動車整備業は設備負担が重く、建物や整備工場への投資のほか、販売も兼業しているところでは仕入れも多くなって借入しなければならず、債務超過に陥ることもあります。億単位の借入があると従業員承継が厳しくなるので、親族に引き継げない場合は外部の規模感が大きい、資金力がある企業に買収されることがあります。

整備工場で点検と整備をしてから海外で車を売りたい、というアフリカやロシアなどの海外へ自動車を輸出している中古車輸出会社の中には、現在外部に委託している整備を内製化したいと考えている買手もいます。そのほかにも、輸入車中心だった自動車販売会社が輸入車の取扱いをやめて軽自動車の販売に転向する際、取り扱う車のラインナップを拡大する目的で買収を検討するケースも見られます。

2.自動車整備業のM&Aについて

自動車整備業でも、M&Aが行われるケースがみられます。この業界におけるM&Aで使われる手法は、以下のような内容です。

(1)自動車整備業でよく使われるM&Aの手法

ある程度借入があるという前提で複数事業を譲渡するケースもありますが、中小企業がターゲットとなることが多く、持っている資産をどう評価するかというという点から、主に株式譲渡となります。億単位の借入があると、事業の一部だけ引き継ぐ事業譲渡が難しくなります。借入が重く、設備を含めた売却となる場合、中小企業ではBS(バランスシート)を含めた株式譲渡が多いのです。

3.自動車整備業でM&Aをおこなうメリットとは


売手、買手それぞれに、自動車整備業においてもいくつかのメリットが挙げられます。多くの場合、整備工場で働く整備士や従業員がメリットに深く関わってきます。

(1)売手のメリット

もし廃業するとなっても、土地や工場だけの売却では価値はつきにくいものです。自動車整備業では、整備士などの従業員や工場に価値があります。先述のように整備士は減少しており、絶対数が少ないからです。そのため、居抜きで売るよりも事業ごと売ることで価値が上がり、その分メリットもあります。

M&Aなら事業そのものを引き継げるばかりか、借入と一体で売ることができるので、従業員の雇用に関する心配も解消できます。

自動車整備業では、整備士や工場を含む事業そのものに価値が出てくるため、実はニーズが高い事業として売りやすく、事業として売却する方がメリットを得られやすいのです。一般的な額がEBITDAの3倍であるのに対し、大手であれば5倍出す場合もあるほどです。整備士不足により買った方が早く、購入意欲が強い業種なので、売却益に期待できる点もメリットといえるでしょう。

(2)買手のメリット

先に述べたように、自動車整備専門学校の進学率が減少し、2級整備士の絶対数が少ない状況で、長期的に見て中途採用できる整備士は多くありません。整備士は、国家資格を必要とする職業です。誰にでもできる職業ではないので、一定の希少性をもつ点が自動車整備業への参入障壁となっています。

そこで、整備士がいる自動車整備工場を買収すれば、自社で採用の手続きを踏まずとも整備士をはじめとした人材を取り込めるメリットがあります。指定工場なら、工場内で車検ができる設備と認可がすでに降りています。国家資格取得者を得られるとともに、運輸局から認可されている設備を同時に買える点に大きな価値があるのです。

自動車は日本全国にニーズがあり、各地方にはローカル企業も多くあります。その意味では、大手企業がエリア拡大、広域化を見込んだニーズも全国各地にあるといえます。

4.自動車整備業でM&Aをおこなう際の流れとは

どのような流れで自動車整備業のM&Aは行われるのでしょうか。売手、買手それぞれの流れを紹介します。

(1)売手側の流れ

自動車整備業には比較的中小企業が多いので、売手はWeb上のマッチングプラットフォームに自社の情報を出します。その情報を見た買手候補が興味を示すという流れです。現状は購入意欲が強いので、情報を出していれば買手が見つかりやすい状況です。まったく関係ない業種より、同業が買手となるケースが多いので、見極めをしてもらいやすい特徴があります。

(2)買手側の流れ

買手がマッチングプラットフォームで興味を持った企業を見つけると、仲介会社にデューデリジェンスなどの実務を依頼します。

大手が買手となるケースが多いので、デューデリジェンスはしっかりと行います。設備に関しては同業者であれば見てわかるものですが、大手の場合はデューデリジェンスに3週間~1ヶ月ほどじっくりと時間をかけます。

合意までには、早くて3ヶ月、一般的には3~6ヶ月ほどかかります。

(3)買収価格の相場

通常、中小企業の算定法では5年、10年後が読みにくいため、純資産+経常利益、営業利益という計算で行います。相場価格は純資産と経常利益の○倍という形ですが、実際は利益の3~5倍です。買手が大手の場合は、純資産+EBITDAの5倍出す場合もあります。

ディスカウントキャッシュフローを行うのは大手のみで、中小企業ではほぼ使いません。設備投資資金や参入障壁があるので、自動車整備業を含む設備産業は高い価格が付きやすく、ほかの業界と比較しても値段が付けやすいのが特徴です。

5.自動車整備業におけるM&Aの事例を紹介

M&A・事業承継を検討している方へ

当社では買手企業だけでなく、「M&A仲介会社」とのマッチングも可能です。
今すぐにM&Aをご検討されていなくても大丈夫です。お気軽にご相談ください。


比較的購入意欲が強い業種である自動車整備業で実際に行われたM&Aには、以下のような事例があります。

自動車整備業でのM&A事例

北陸地方にある売上高2、3億円ほどの自動車整備工場で、経営者も高齢となって後継者がいない工場の事例では、同エリアで自動車整備や販売などを展開し、20億円ほどを売り上げている自動車関連の企業グループが買収しています。

そのほかには、ある東海地方の大手自動車整備会社が、近隣へのエリア拡大を狙って2、3億円ほどの自動車整備工場を買収している事例もあります。

また、中古車販売をしている大手企業での事例では、販売をしているものの整備士不足というケースがあります。整備工場を自社で建てられず、人員も不足している状態ですが、整備ニーズを内製化したいと考えて自動車整備工場を買収しています。

6.自動車整備業でM&Aを成功させるためのポイント


M&Aを成功させるためには、売手・買手双方におさえておくべきポイントがあります。売手ならできるだけ良い条件を得るため、買手ならより良い整備工場を買収するためのポイントについて解説します。

(1)売手側のポイント

黒字であるという点です。債務超過となっている場合、その企業に対するニーズがあっても値段交渉がしづらくなってしまうからです。ある程度の借入があるのは当然ではありますが、健全経営をしていればいい条件が付きやすくなるでしょう。

自動車整備業は、専業でやっているところが多いものです。買手は、ほぼ従業員目的で買収を考えています。売れやすい業界なので、従業員をしっかり教育していてレベルを底上げし、引き継ぎがしっかりできる企業なら、評価が高くなるでしょう。

(2)買手側のポイント

まず、従業員をチェックしましょう。良い従業員がいるかどうかは、必ずチェックすべきポイントです。特に、整備士や検査員がいる点が大きなポイントとなります。

自動車整備業では、従業員の年齢が社長と同年代、または若くても50代というケースがあります。そのため、若手がいればなお良いでしょう。売手側のポイントと同様、きちんと従業員が教育されているかどうか、教育されている人材がいるかどうかは最大のポイントです。また、人員がいるかどうかに加えて、若手を含めた整備士がいるかどうか、工場の設備がすぐに使える状態であるかどうかも確認しておくべきです。

実態と帳簿が乖離しているケースは多く、基準を満たすために見た目だけ売上を改善させる建築業のようなケースはないものの、自動車整備業には借入の多い企業が少なくありません。自動車整備工場で修理と整備、中古車販売を行うところでは、在庫を持ち、さらに工場を建てる必要もあり、どうしてもコストがかかってしまいます。そのような企業の場合は、財務状況や借入がどの程度健全なのかをしっかり見ておくことも重要です。

7.まとめ

自動車整備業は、買手と売手のバランスでいえば買収意欲が強く、思っている以上に売りやすい業種です。特に、整備士がいる指定工場は売りやすく、値段も付けやすくなります。

自動車整備工場を売却する際は、整備士をはじめとした従業員をどう引き継ぐか、売手にとっては会社の財務をいかに整えて健全経営をしていくかが、価値を上げるポイントとなるでしょう。

話者紹介

石坂 裕
株式会社ヒルストン 石坂 裕(いしさか ゆたか)

1968年石川県金沢市生まれ。東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルートキャリア入社。
20年以上にわたり新卒・中途採用支援に携わる。東京・富山・熊本・大阪での勤務を経て独立。
ヒルストングループとして税理士事務所への顧問先紹介、地域特化・職種特化型の人材紹介、
中小企業に特化したM&A仲介及びアドバイザリー業務の3つを柱に事業展開している。

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